或る旅2

おでかけ記録です。ライブドアからはてなに移転しました

シンガポールは不思議とカオスで満ちている

2018年3月

北京を出た中国国際航空便は、早朝のシンガポールチャンギ国際空港に着陸した。
シンガポールは入国の際に帰りの航空券が無ければならないそうで、成田空港のカウンターでお姉さんから脅されたのだが、入国審査官に「ジョホールバルからマレーシアに入る」と告げると案外あっさりとスタンプが押された。

マレー半島の先端、ここシンガポールは交易の一大拠点として栄えた。
小さな島国でありながら、東南アジアをリードする国の一つとなっている。

今回は、そんなシンガポールを一日歩き回ってみようと思う。
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日本語表記もあるのはビックリだ。

チャンギ空港駅で地下鉄、MRTの一日券を購入する。
窓口が開く数十分前に訪れたが、既に長蛇の列が出来ておりさながら開店前のパチンコ屋といったところであった。
そんな状況でありながら、どういうわけか二つある窓口のうち一つしか開放せず、後ろのほうでは別の係員が暇そうにしている。
さっそく「アジア時間」の洗礼を受けている。

シンガポールのMRT一日券はデポジット式で、使用終了時に駅の窓口で返却すると金額の一部が返却される。
窓口でお姉さんに「どこで返却するか」と問われるも、英語の発音に問題があったため一発で聞き取ってはもらえなかった。

とんだ旅の幕開けであった。

MRTに乗り、都心部の「Bugis」という駅で降りる。
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いきなりだが、ビルがいちいち高すぎて首が痛くなる。
よく、地方出身の人が「東京でビルを見上げたら気持ち悪くなった」みたいなことを言っているのを聞いて東京育ちの私には理解ができなかったものだが、なるほどこういう感覚かと思った。

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朝ごはんはシンガポール名物の「カヤ・トースト」セットだ。
カヤジャムというジャムが挟まったトーストとコーヒーと、どういうわけかゆで卵がセットになっている。
「トーストボックス」というチェーン店がシンガポール国内に点在している。ちなみに香港でも見かけた。
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シンガポールはワンブロック進んだだけで建物のサイズが変わるのが面白い。
Bugis周辺を歩く。
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これは「サルタン・モスク(マスジット・サルタン)」。
アラブ人街にあり、建物としての歴史も長いのだそう。

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ド派手な壁画だ。
さて、せっかく一日券もあるのだから無駄に一駅分MRTの電車に乗って移動する。
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「リトル・インディア」は文字通りインド人街で、それらしいものがあちこちにある。
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建物もいちいちカラフルで良い。

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ただの路地裏なんだが、室外機の並びがなんとなく気に入った。

リトル・インディアで、訳あって『地球の歩き方』を開いていると、中華系と思われるおばあちゃんにその娘?と思われる人物に話しかけられる。
「ニホンゴ!」
「Yes. えっと、Can you speak Japanese?」
「アー...(よくわからなさそう)」
いや、なんなんだよ。
娘のほうは英語がわかっていそうだったが、おばあちゃんは英語がダメらしい。
シンガポール公用語は英語である。
彼女はシンガポール人ではないのか。それとも、シンガポールでも「中華系」コミュニティで暮らしているので中国語だけで生活ができているのか。


地下鉄で移動し、「オートラム・パーク」駅へ行き、15分ほど歩いていく。
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ここに来たのは、「シンガポール駅」として利用されていた建物を見るためだ。
かつてシンガポールにはマレーシア鉄道の列車が乗り入れていたのだが、その線路は廃止され現在はシンガポール北部のウッドランズ止まりとなってしまった。

だが、建物自体は残っているとの情報があり、こうして見に来たわけである。
現在はフェンスが辺りを囲っており立ち入ることはできず、それどころか前面が工事用のプレハブ小屋によって隠されている。
その姿を見ることができるのはこの場所だけであった。

重厚な石造りの、コロニアルな雰囲気の建物である。
かつてマレー半島を縦断する長距離列車がここを発着していたと考えると、非常にロマンがある。
とはいえ、現在では修復工事なのか解体工事なのかわからないが、かつての面影だけを残して建物が残っているのみである。
まあ見られただけましであろう。
シンガポールがこの建物の扱いをどうするかはわからないが、今後、何かしらの形で残ってくれればと思う。

少し移動して、「チャイナタウン」駅へ。
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もっとも、シンガポールは住民の多くが華僑なので総チャイナタウンという感じなのだが、ここは特に中国感がある。

さてここで、カメラのレンズ拭きを買い忘れたことに気づき、カメラ屋に入る。
無事にレンズ拭きは購入したのだが、カメラ屋の親父は奥から何やら出してきた。
「これは保護用フィルターなんだけど、20ドルでやるよ。いらないかね」と。
要するに、セールスというところだ。
しかし、まだ東南アジアの旅が始まったばかりだ。

「これから長い旅だから金使えないんだよね」と私が言うと彼は、
「長い旅なら、なおさら保護フィルターが必要じゃないか」と。
確かに。
「高ければ値引するさ。ほら、これでどうだ」
彼は電卓を叩き、その数字はどんどん下がっていく。

いやいや、ここで散財するわけにはいかない。
「うーん、やめときますわ」
そう言って私は店を出た。
しかし、歩きながら頭の中で、これから訪れるタイやらカンボジアやらの未舗装の道路の情景がぐるぐると回っている。

そうこうしているうちに、今回の目的地に到着した。
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ホーカーズは屋根のついた屋台街だ。多くの店が立ち並んでいる。
いろいろある中で、食べようと思っていたものがあった。
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シンガポール名物の「チキンライス」だ。
蒸し鶏と海南炒飯である。

オーダーするとオバちゃんがさっと作ってくれた。
とても美味しい。

しかし、それを食べている間にも、先ほどのフィルターのことが頭から離れない。

決意を固めた。
買おう。
そして私は、先ほどのカメラ屋に向かって歩き始めていたのであった。

さて、その途中の話である。
寺院の前で男たちが「フリー!フリー!」と叫んでいる。
入場無料ということだろうが、それならなぜ呼び込みなんかしているのだろうか。

寺院の説明書きの前で立ち止まっていると、そのうちの一人に声を掛けられた。
「入場無料だよ!」
「写真撮影有料って書いてあるけども」
「いや、気にすんな。さあ入った入った」
続けて彼は、
「ここからは土足禁止だ。ここで靴を脱げ」
と言う。
カラーボックスが無造作に置かれており、そこに置けと。
「靴を見といてやるよ。一回2ドルだ」

なるほど。ここで全ての謎が解けた。
入場無料の寺院なのに必死に呼び込みをするのは、彼らの「小遣い稼ぎ」のためだったのだ。
「オッケー、いいやそうしたら」
私はそう言って歩き出した。相手にするだけ時間の無駄だったのだ。
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先ほどのカメラ屋に到着した。
「やっぱり買うよ」
私はそういうと、親父は嬉しそうに「そうかそうか」と笑った。
値段も、値下げ後のものだった。

そうしてフィルターを購入したわけだが...。
彼は「ちょっと待て」と言って奥から何かを出してきた。
「マジックレンズ。これを付ければ望遠も広角も自由自在!」と。
まだまだセールスは続くようだった。

終らないセールスを断り、再びMRTの駅へと歩き出したのであった。

ちなみに、この時購入した保護フィルターは、半年後にマカオでバスに轢かれてさようならしている。

そういえば...。

シンガポールに来たのに、「アレ」をまだ見ていない。
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マーライオンだ。
日本人や中国人、アラブ人の観光客でごった返している。

「世界三大残念スポット」みたいな扱いをされているが、まあそこまで残念でもなかったというのが正直な感想である。もちろん、感動もしないのだが。
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奥にあるのはマリーナベイサンズのホテルである。
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これは「カベナ・ブリッジ」という橋。
歴史がありそうだ。
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これだけ見たらヨーロッパ感がある。
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コロニアル建築だ。
この地区にはこういった歴史的な建築が残っているようだ。

さて、地下鉄でさらに移動しようと思う。
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マリーナベイサンズの真下に来た。
あの、ビルとビルの間をつないでいる「屋上部分」が落ちてきそうだ。

しばらく歩くと
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出てきた。これこれ。
シンガポールの植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」である。

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映画「アバター」とか、そういう3D作品のなかに迷い込んでしまったかのような感覚になった。
現実にいるのか夢の中にいるのか…。

そしてここ、日が暮れるともっとすごい。
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段々暗くなっていく。
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ライトアップがなされる。
なんというか、ラスボス感がある。

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ちなみにこの「木」には登ることができる。
遠くにはシンガポールの街並みや港がよく見える。
今も昔も貿易の拠点なのだなと改めて感じる。
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ショーが始まるともっとすごい。音楽に合わせて光が変化している。

さて、ショーに圧倒されているうちにそろそろ移動の時間になった。
マリーナベイサンズに泊ればずっと見ていられるのだろう...。

MRTに飛び乗り、Bugis駅へ戻る。
ここから国境を越えるバスに乗るのだが、ここでもまた「東南アジアの洗礼」を受けるのであった…。


マレー縦断鉄道旅 ①初めての国境越え シンガポール→ジョホールバル
へと続く...。

マレー半島の先端にある小さな島国だが、中国やイスラム、インドと、様々な文化を一度に見て回れるのがシンガポールの魅力だと思った。
ある意味で、某「夢の国」を思わせる”テーマパーク”といった感じであった。
一方、不思議な人々にもたくさん出会えるのもまた面白い。

日本からもそんなに遠くはないので、ぜひ行ってみていただきたい。