或る旅2

おでかけ記録です。ライブドアからはてなに移転しました

列車が突っ込んでくる市場 メークロンへ行こう

あなたはこんな映像を目にしたことがないだろうか。
賑わっていた市場が急に店じまいをし、そこに列車が突っ込んでくる。
列車が去ると、再び店が開き市場が活気を取り戻す...。

日本ではまずありえないような風景に、「面白いスポット」というだけでなくエキゾチックさも感じられ、ぜひ行ってみたいと思ったりもしたものだ。

それがなんと、バンコク近郊にあるのだという。

2018年3月後半。東南アジアを旅した私は、この機会に行ってみることにしたのであった。

バンコクから鉄道で行くこともできるが、一日に4本と非常に本数が少ない。
それゆえ、まずはロットゥー(10数人乗りの大型のバン)で直接行こうと考えた。
バンコクBTSで終点のモーチット駅で下車。そこから20分ほど歩くとモーチット・バスターミナルに到着だ。
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ここからが大変で、窓口で「How can I ...」というだけでやれ「ノーイングリッシュ」だの、「わからない」という顔で対応するだの、踏んだり蹴ったりであった。

が、どうやら、モーチット駅側の手前のターミナルは市内のローカルバス(上の画像の建物)のもので、メークロン行きロットゥーは長距離バスのほうの乗り場から発車するようだった。
長距離バス乗り場は立派なターミナルで、英語が通じる人も少なからずいた。

が、肝心のロットゥー乗り場はというと、運動会のテントみたいな簡単な建物(?)で料金の支払い・バスの待合をするようだった。

正確な値段は忘れたが、確か数百円程度だったと思われる。

ロットゥーは、私と数人の中国人女性グループ、地元のオバちゃん一人を乗せて動き出した。
すぐに高速道路に乗った。
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これは建設中の新しいターミナル駅らしい。
ファランボーン駅に代わるそうなのだが、果たして…。

ロットゥーは、途中給油などでガソリンスタンドに止まったりはしたものの、快調に飛ばいsていた。

約2時間だっただろうか、目的地のメークロンに到着した。
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しかしまあ、メークロンはこの市場が有名というだけで、特に何か観光地というわけでもないただの田舎町である。

現在お昼の12時頃なのだが、列車の到着が15時頃とあってなんとも微妙な感じである。

少しふらふらしてみようと思う。
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まずはその市場から。
やはり噂通り、線路の上でもお構いなしに商品を置いている。
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昼寝中のネコチャン
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線路と店の境目がわからない。
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そしてこれが結構な長さで続いているのである。

とはいえ、市場それ自体はこんなものである。
あと1時間半以上あるが…うーん。
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メークロン駅は、市場に突っ込む「メークロン線」の終着駅だ。

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線路の先は川。
そういえばタイ語で「メー」は「川」なんだっけ。
ということは、「クロン川」?
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バンコクにはない、タイの田舎特有ののんびりとした時間が過ぎていく。

さて、そうしているうちに列車の時間が近づいた。
15時半の列車が最終列車であり、これに乗らないとバンコクには戻れない。
市場へと戻る。
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構内放送が流れると、商店のおばあちゃんが店をたたみ始める。
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すぐにたためるようにテントが組まれているのである。

田舎町、とはいえ既にこの市場が有名になったことで観光地化はされており、アジアのみならず世界各地から観光客が訪れている。
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多くの店がたたみ始めるとこの有様である。

ところで、私は大きな荷物を持っていたのだが、このおばあちゃんが「ユー」と言って店の奥に預かってくれた。私も煙たがられるべき観光客なのだが、地元の人の優しさには感動した。

構内放送が掛かると、列車が警笛を鳴らしながらゆっくりと進入してくる。
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列車がどんどん近づいてくる。
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ついにやってきた。

鉄道オタクを20年やっていても、動いている列車にここまで近づいたことはない。

なかなかの「恐怖」ではある。
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まずだ、列車の乗客とこの位置関係で目を合わせる機会など普通はない。


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人が轢かれないこともそうなのだが、商品が潰れたり壊れたりしないこともすごい。

もともとこの市場は違法に設置されたものだったそうなのだが、なんだかんだで認められ現在に至るのだそう。一日4往復しか列車がないとはいえ、一日4回もこの作業をするのはなかなかのものだと思う。
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列車が去ると、市場は何事もなかったかのように元の姿を取り戻す。

私は、先ほど荷物を預けた商店でドライマンゴーを買うと、折り返しの列車に乗るべく駅へ向かった。
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メークロン駅からの”最終列車”であるバーン・レーム行き列車。

定刻になり、列車が動き出す。
先ほど列車を眺めた市場の真ん中を通る。
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必死にテントを押さえる商店の人々

お祭り騒ぎのようなメークロン市場の雑踏を徐行で通り抜けると、列車は加速し辺りは一気に田園地帯となった。
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日本のローカル線のようなのんびりとした空気が車内を漂う。

冷房はなく、窓は全開。
心地よい風が通り抜けていく。

マレーシアの鉄道は確かにタイよりも設備が整っていたが、冷房が効きすぎていた。
冷房のないタイの列車のほうが快適だった。
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南国の風景の中を進む。

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16:30、約一時間で終点のバーン・レームに到着。

メークロン線はどういうわけか川を境に分断されており、渡し舟を使って対岸のバンコク方面行きに乗らなければならない。

さて、その渡し舟の乗り場がわからない。
駅員に聞くと、「そいつらと行け」と。
見ず知らずの白人カップル二人との集団行動を命ぜられたのだった。

どうやら彼らはドイツ人らしく、アジア旅行トークをしながら船着き場まで歩いた。
うまくもないドイツ語に付き合ってくれてありがとう。

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看板も何もない。地元民しか利用しなさそうな道を通る外国人3人。
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そして船着き場へと到着。
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原付もそのまま乗っているけれど、これ大丈夫なのか…。

今にも沈みそうな渡し舟は大きな音をたてながら動き出した。
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ター・チーン川と呼ぶらしい。
大陸の川らしく濁った川を、午後の傾きかけた太陽が照らしている。
誰も急いではいない、穏やかな時間が過ぎていく。
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鳥たち。
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船着き場。
ここから駅までは数百メートルほど商店街の中を歩く。
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活気がありとても良い。
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マハ―チャイ駅に到着。
とはいえ、やはり発車までは時間がある。
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よくもまあこんな線路の状態で脱線しないよなぁ、と。

他の路線と繋がっていないとはいえ、一応は国鉄の路線なのだが…。

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どこまでも続く線路。
それにしてもガタガタである。
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駅前市場はなかなか活気がある。
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再びネコさん。

発車時刻になったので駅に戻る。
ここからはまた1時間程度の移動だ。

ドアは開きっ放しだが列車は速度を上げていく。

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終点のウォンウィエン・ヤイ駅に到着。
ここはバンコクの下町といったところだろうか。
駅前もなんだか、東京の下町を見ているかのようだ。

他の路線と繋がっていないとはいえ、BTSのウォンウィエン・ヤイ駅も徒歩圏内なのでスクンビットなど都心部にも出やすい。

メークロン市場それ自体にはロットゥーで往復すればもっと簡単に行けるのだが、せっかくなので行きか帰りかで列車に乗るのはお勧めしたい。
「列車で往復」は結構しんどいのでは、と思った。

ただ、一日あれば行ける距離なので、バンコクに行くことがあればぜひ行ってみてほしい。