或る旅2

おでかけ記録です。ライブドアからはてなに移転しました

小三通ルートで中台国境越え(後編)

前回のあらすじ

中華人民共和国厦門から船で台湾領の離島・金門島に渡ってきた私だが、真っ暗な住宅街で犬に追われ、予約した宿の住所にたどり着いても宿はなく、完全に詰んでいた。

そんななか、地元民のお姉さんに声をかけられ…。

 

私は、今の状況を必死に説明した。「予約した宿の住所、ここのはずなのだが」と。すると彼女は、電話を取り出し連絡先に電話してくれたのであった。

そのころには2~3人ほどの近所の方々も集まっており、ちょっとした騒動になってしまったようだ。大変申し訳ない。

「車で来てくれるから待ってて、ってさ!」とのことで、数分後、赤い車に乗った宿屋の主人らしきオバちゃんが現れたのであった。

言われるがまま乗せられると、そこから数百メートルほど先の真っ暗な森の中にある大きな屋敷のような建物に連れていかれた。サイトの住所、直してくれよな…。

 

さて、このオバちゃん、英語が一ミリもわからないようだ。それゆえ、こちらが現地の言語に対応する必要がある。昨日、厦門のタクシー運転手兄貴とコミュニケーションをとったときに使用したグーグルの音声翻訳機能にお世話になった。

 

広いドミトリーに案内された。先客はいないようだ。今日はここで一人かな…と思ったその時だった。

ガチャ…とドアが開く。

若い男が部屋に入ってきた。旅行者だろうか。

私はドミトリーではほかの客と話さないタイプの人間である。黙って過ごそうか、と思っていたそのときである。

彼が中国語で私に何か話しかけている。なお、私は中国語が一ミリもわからない。「ごめんなさい、中国語できないんだ」と英語で言うと、「あ、どちらから?」と英語で返してくる。

日本から来た、と言うと、プロ野球が面白いよなとか、好きな芸能人は、とか、そういう話になって、盛り上がった。やはり隣国にもなると共通の話題も多い。

 

彼は台湾出身だが、現在は厦門で働いているのだそうだ。台湾本土に帰省していたのだが、金門からの最終のフェリーに乗り遅れて一泊せざるを得なくなったのだそう。要するに、彼は私と真逆の方向へ進んでいるのである。

 

「明日は台南に行くんだ」と私が言うと、「そしたらおすすめの場所がある!」とあれこれ教えてくれた。観光ルートみたいなのも検討してくれた。

 

そういえば夕食はまだだった。宿屋のオバちゃんに「近所に食堂はないか」と聞くも、「ないね。コンビニ連れてくよ」とのことで、彼と共にオバちゃんの赤い車に乗せられ、市街地手前のセブンイレブンに買い出しに出かけた。

台湾のセブンイレブンとはどんなものか、と思ったものだが、日本のそれとはあまり変わらないようだった。

弁当を買い、宿に戻る。そして、彼と夜中じゅう話した。

「もし僕が予定通り船に乗れていたら、僕らは出会えなかったな」と彼が笑う。

旅とはやはり、偶然を楽しむものなのである。

 

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翌朝。

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南国然としたのんびりした空気が島全体を流れている。伝統的な建物だろうか。明るい時間だからこそ楽しめる景色である。

 

午前中のわりと早い時間に、台湾本土行きの飛行機を予約していた。

彼が空港までのタクシーをとってくれたのでスムーズに向かうことができた。何から何まで教えてくれて本当に助かった。

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金門空港に到着。まさに地方空港という感じである。

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南行きのプロペラ飛行機。プロペラ機は子供のころにヨーロッパの国内線で乗った記憶はあるが、最近は全く乗っていなかったので少し楽しみだった。

小さい機体はふらふらと離陸し、小さな島を後にすると台湾本土へ向けて高度を上げていった。

 

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やはり南国である。サンゴの海を眼下に眺めながらのフライトだ。

隣に座っていたオジサンが話しかけてきた。

「日本人かい?」

ええ、と言うと、

「昔は仕事で日本もしょっちゅう行ってたし日本語も話せたんだが、今はさっぱりだよ」と笑った。それから、英語ではあったが、彼の日本での思い出とか日本の取引先の話とか、いろいろな話をした。

列車で出会った人と話が盛り上がったことはあるが、飛行機の隣席の客と話すという経験もなかなかない。ローカル便ならではの「ゆるさ」を感じた。

45分ほどのフライトはあっという間だった。台湾本土が見えたと思うと、小さな機体はすぐに台南空港に降り立った。

 

オジサンと別れ、空港を出るとタクシーで市街地へ向かった。

このあとは、金門島で出会った彼に教えてもらった観光地を巡るとしよう。

 

中国本土から台湾へと渡る「小三通ルート」は、きっと中国語が出来ればかなりスムーズで”面白い”ルートなんだろうなと思う。

直接飛行機で渡るほうが早くて安いのは事実だが、あえて金門島を挟んでローカル気分を味わえるのもよいと思った。

厦門金門島も十分に観光できていなかったし、また訪れてみたい。

小三通ルートで中台国境越え(前編)

2018年9月

中華人民共和国福建省厦門にいる。日本語では「アモイ」と呼ばれることが多いが、現地語では「シャーメン、Xiamen」が正式らしい。

 

「小三通」なるルートをご存じだろうか。

ここ厦門から船を使って台湾領の金門島へ向かい金門島から台湾の国内線の飛行機で台湾本土へ入る、というものである。今回は、そのルートについてのお話。

ところで、私は中国語が一ミリもわからない。今思えば我ながら英語の通じない中華圏でかなりの冒険をしたと思っている。それゆえ、ここでの会話は基本的に身振り手振りになっていることをご承知おきいただきたい。

 

さて、ここまで私は、香港→深圳→厦門と移動している。

厦門で観光しようとしたところ手持ちの中国元が切れてしまい、銀行で両替をお願いしようとしたものの「中国に住所がないとだめだ」と門前払いをされ続けた。

完全に詰んだ私だが、ネットで国際キャッシングの存在を知り、恐る恐るATMに手持ちのカードを突っ込んだところ無事に中国元が引き出せたのであった。

しかし、中国元を引き出したころにはすっかり夕方になってしまった。厦門観光などしている時間はない。泣く泣く金門行きのフェリー乗り場へ移動することにしたのであった。

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厦門駅はかなり大きな駅だが、高速鉄道の発着などは郊外の厦門北駅のほうにシフトしているようだ。

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駅前でタクシーを拾おうとするが、先客がいるようだ。彼らに譲ろうか…と思ったときだった。

「乗れ!」と手を振りタクシー運転手氏は私を助手席に乗せる。
相乗りである。かなりびっくりだったのだが、こちらでは普通のことなのだろうか。

運転手氏は私に中国語で話しかけるが、私は何一つ理解ができない。そして運転手氏は一切英語を解しないようだった。行先はスマホで入力した漢字をそのまま見せた。

話が通じないことについて、彼は「困ったなぁ」とでも言ったのだろうか、先客と笑いあっていた。ごめんよ。。。

先客を降ろしたタクシーはスピードを上げた。

お互いに言葉が通じないということで、もう笑うしかなかった。

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市街地を抜け、広い道路に出るとタクシーはビュンビュン飛ばす。運転手氏は「イェーイ」と笑い、私も「イェーイ!」と返した。なんの時間なんだ。

グーグルの音声翻訳は人類最大の発明だと思ったのはこの時だった。私は、「私は日本から来ました。私は学生です」と打ち込むと、スマホがペラペラと翻訳し始める。

運転手氏は理解したようで、再び「イェーイ」と笑う。

今思えば、我ながら己の能天気さに呆れるものだが、この時はこうやって「楽しむ」ことしか考えられなかったのかもしれない。

ほれ見ろ、と運転手氏は右のほうを指さした。「あれが金門だ!」と言っているようだ。

海の向こう側に島が浮かんでいる。そう、中華人民共和国の目と鼻の先に台湾領の金門島が見えるのである。

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厦門のフェリーターミナル、五通碼頭に到着した。なんとか今日中に金門島に行けそうである。

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 「和平之星」というすごい名前の船だ。

チケットを購入し、出国審査に進む。中華人民共和国の出国は案外スムーズだった。そういえば、昨日深圳から入国したばかりで1日しか滞在していないし、もっというと24時間も経っていない。怪しげな日本旅券の男だとか思われなかったのが幸いである。

時間になると列が動き始める。

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いたって普通のフェリーである。

乗客のなかに日本人はおろか、外国人の姿はないようだ。微妙な関係にある両国間(この表現も大陸側においては若干センシティブではあるが)だが、人々の行き来は普通に行われているようである。

定刻になり船が動き出す。金門島に向け南東方向に向きを変えるフェリーの客室内を夕陽が照らす。

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約30分ほどで、台湾は金門島に到着した。初めての台湾訪問だったが、まさか台北ではなく離島、それも中華人民共和国の目と鼻の先から船での入国になるとは。

入国も極めてスムーズだった。台湾のスタンプが押されてようやく台湾に入ったことを実感した。

表示も繁体字になっている。シンガポールから入国したジョホールバルでマレー語の表記を見た感覚を思い出した。

さて、フェリーターミナルで手持ちの中国元を台湾ドルに両替しよう。…と思ったのだけれど、両替店がすべて閉まっているではないか。

「ユー」

お姉さんが、戸惑う私に声をかけた。「両替は全部閉まってるよ。私のドルと交換しない?」と言っている。彼女はこれから中国大陸に向かうようだった。

閉まっている両替屋のカウンターで、私の手持ちの元を数えながら軽快に電卓を叩く。レートがよくわかっていなかった私は、提示された数字を見て少し怪訝な顔をしてしまったようだ。彼女は「普通よりもいいレートだよ」と笑った。

彼女がいい人なのか詐欺師なのかはすぐに判断できなかった。だが、現金の手持ちがゼロなのは痛い。若干の損失があったとしても、今はありがたく台湾ドルをいただくことにしよう。

交換が終わり、礼を言うと彼女は厦門行きフェリーの人混みのなかへと消えていった。

あとで調べると、通常のレートよりはるかに「お得」であったことが判明した。海外では他人を信用しすぎるのも危険だが、一方で警戒しすぎるのも危険なのである。

 

水頭という地区に到着した船だが、ここから宿までは距離があるようだ。完全にリサーチ不足なのだが、公共交通機関があるのか調べるよりも歩いたほうが早いと思った。

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地図で見たら宿まで4㎞もないような感じだった。…が、歩けど歩けどたどり着かない。考えてみれば、島なんて起伏が激しいうえにカーブが多いんだから目分量の直線距離があてにならないのは当然なのであるが。

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辺りはすっかり真っ暗になってしまった。とっくにヘトヘトなんだけれど、しかし、こんな建物を発見して、少し得した気分にはなった。

さて、ようやく予約した宿と思われる場所にたどり着いた。

…はずだった。

 

が、宿らしきものは一切ない。

寺院の境内らしき敷地に足を踏み入れる。

「ワン!!!」

暗闇から、いかにも噛み噛みするのが得意そうな番犬ワンちゃんが現れた。恐ろしいことに、どこにも繋がれていないのである。

確か背を向けて走ったりしたら追ってくるんだよな、とどこかで聞いた知識を思いだしその場で後ずさりする。ワンちゃんは「ウー」と唸りながらゆっくりとついてくる。

手を挙げながら「OK~、STOP」などと、語り掛ける私。

なんと惨めな姿だろう。しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。

ゆっくり歩きながら「犬 追われた 対処法」などと検索。特に何か得られた情報はないが、ワンちゃんは離れていったようだ。

 

だが、最も重要な問題が解決されていない。宿がどこにあるか、である。

宿の住所を訪ねると、現地の家族が楽しそうにテーブルを囲み夕食の時間を過ごしているのが見えた。お腹もすいたし、なんならそこに混ぜてくれよとすら思った。

 

真っ暗な住宅街で右往左往していると、犬の散歩をしている地元のお姉さんに声をかけられた。

一筋の光が見えた。

 

後編に続く…。

 

 

列車が突っ込んでくる市場 メークロンへ行こう

あなたはこんな映像を目にしたことがないだろうか。
賑わっていた市場が急に店じまいをし、そこに列車が突っ込んでくる。
列車が去ると、再び店が開き市場が活気を取り戻す...。

日本ではまずありえないような風景に、「面白いスポット」というだけでなくエキゾチックさも感じられ、ぜひ行ってみたいと思ったりもしたものだ。

それがなんと、バンコク近郊にあるのだという。

2018年3月後半。東南アジアを旅した私は、この機会に行ってみることにしたのであった。

バンコクから鉄道で行くこともできるが、一日に4本と非常に本数が少ない。
それゆえ、まずはロットゥー(10数人乗りの大型のバン)で直接行こうと考えた。
バンコクBTSで終点のモーチット駅で下車。そこから20分ほど歩くとモーチット・バスターミナルに到着だ。
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ここからが大変で、窓口で「How can I ...」というだけでやれ「ノーイングリッシュ」だの、「わからない」という顔で対応するだの、踏んだり蹴ったりであった。

が、どうやら、モーチット駅側の手前のターミナルは市内のローカルバス(上の画像の建物)のもので、メークロン行きロットゥーは長距離バスのほうの乗り場から発車するようだった。
長距離バス乗り場は立派なターミナルで、英語が通じる人も少なからずいた。

が、肝心のロットゥー乗り場はというと、運動会のテントみたいな簡単な建物(?)で料金の支払い・バスの待合をするようだった。

正確な値段は忘れたが、確か数百円程度だったと思われる。

ロットゥーは、私と数人の中国人女性グループ、地元のオバちゃん一人を乗せて動き出した。
すぐに高速道路に乗った。
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これは建設中の新しいターミナル駅らしい。
ファランボーン駅に代わるそうなのだが、果たして…。

ロットゥーは、途中給油などでガソリンスタンドに止まったりはしたものの、快調に飛ばいsていた。

約2時間だっただろうか、目的地のメークロンに到着した。
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しかしまあ、メークロンはこの市場が有名というだけで、特に何か観光地というわけでもないただの田舎町である。

現在お昼の12時頃なのだが、列車の到着が15時頃とあってなんとも微妙な感じである。

少しふらふらしてみようと思う。
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まずはその市場から。
やはり噂通り、線路の上でもお構いなしに商品を置いている。
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昼寝中のネコチャン
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線路と店の境目がわからない。
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そしてこれが結構な長さで続いているのである。

とはいえ、市場それ自体はこんなものである。
あと1時間半以上あるが…うーん。
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メークロン駅は、市場に突っ込む「メークロン線」の終着駅だ。

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線路の先は川。
そういえばタイ語で「メー」は「川」なんだっけ。
ということは、「クロン川」?
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バンコクにはない、タイの田舎特有ののんびりとした時間が過ぎていく。

さて、そうしているうちに列車の時間が近づいた。
15時半の列車が最終列車であり、これに乗らないとバンコクには戻れない。
市場へと戻る。
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構内放送が流れると、商店のおばあちゃんが店をたたみ始める。
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すぐにたためるようにテントが組まれているのである。

田舎町、とはいえ既にこの市場が有名になったことで観光地化はされており、アジアのみならず世界各地から観光客が訪れている。
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多くの店がたたみ始めるとこの有様である。

ところで、私は大きな荷物を持っていたのだが、このおばあちゃんが「ユー」と言って店の奥に預かってくれた。私も煙たがられるべき観光客なのだが、地元の人の優しさには感動した。

構内放送が掛かると、列車が警笛を鳴らしながらゆっくりと進入してくる。
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列車がどんどん近づいてくる。
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ついにやってきた。

鉄道オタクを20年やっていても、動いている列車にここまで近づいたことはない。

なかなかの「恐怖」ではある。
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まずだ、列車の乗客とこの位置関係で目を合わせる機会など普通はない。


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人が轢かれないこともそうなのだが、商品が潰れたり壊れたりしないこともすごい。

もともとこの市場は違法に設置されたものだったそうなのだが、なんだかんだで認められ現在に至るのだそう。一日4往復しか列車がないとはいえ、一日4回もこの作業をするのはなかなかのものだと思う。
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列車が去ると、市場は何事もなかったかのように元の姿を取り戻す。

私は、先ほど荷物を預けた商店でドライマンゴーを買うと、折り返しの列車に乗るべく駅へ向かった。
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メークロン駅からの”最終列車”であるバーン・レーム行き列車。

定刻になり、列車が動き出す。
先ほど列車を眺めた市場の真ん中を通る。
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必死にテントを押さえる商店の人々

お祭り騒ぎのようなメークロン市場の雑踏を徐行で通り抜けると、列車は加速し辺りは一気に田園地帯となった。
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日本のローカル線のようなのんびりとした空気が車内を漂う。

冷房はなく、窓は全開。
心地よい風が通り抜けていく。

マレーシアの鉄道は確かにタイよりも設備が整っていたが、冷房が効きすぎていた。
冷房のないタイの列車のほうが快適だった。
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南国の風景の中を進む。

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16:30、約一時間で終点のバーン・レームに到着。

メークロン線はどういうわけか川を境に分断されており、渡し舟を使って対岸のバンコク方面行きに乗らなければならない。

さて、その渡し舟の乗り場がわからない。
駅員に聞くと、「そいつらと行け」と。
見ず知らずの白人カップル二人との集団行動を命ぜられたのだった。

どうやら彼らはドイツ人らしく、アジア旅行トークをしながら船着き場まで歩いた。
うまくもないドイツ語に付き合ってくれてありがとう。

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看板も何もない。地元民しか利用しなさそうな道を通る外国人3人。
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そして船着き場へと到着。
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原付もそのまま乗っているけれど、これ大丈夫なのか…。

今にも沈みそうな渡し舟は大きな音をたてながら動き出した。
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ター・チーン川と呼ぶらしい。
大陸の川らしく濁った川を、午後の傾きかけた太陽が照らしている。
誰も急いではいない、穏やかな時間が過ぎていく。
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鳥たち。
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船着き場。
ここから駅までは数百メートルほど商店街の中を歩く。
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活気がありとても良い。
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マハ―チャイ駅に到着。
とはいえ、やはり発車までは時間がある。
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よくもまあこんな線路の状態で脱線しないよなぁ、と。

他の路線と繋がっていないとはいえ、一応は国鉄の路線なのだが…。

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どこまでも続く線路。
それにしてもガタガタである。
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駅前市場はなかなか活気がある。
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再びネコさん。

発車時刻になったので駅に戻る。
ここからはまた1時間程度の移動だ。

ドアは開きっ放しだが列車は速度を上げていく。

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終点のウォンウィエン・ヤイ駅に到着。
ここはバンコクの下町といったところだろうか。
駅前もなんだか、東京の下町を見ているかのようだ。

他の路線と繋がっていないとはいえ、BTSのウォンウィエン・ヤイ駅も徒歩圏内なのでスクンビットなど都心部にも出やすい。

メークロン市場それ自体にはロットゥーで往復すればもっと簡単に行けるのだが、せっかくなので行きか帰りかで列車に乗るのはお勧めしたい。
「列車で往復」は結構しんどいのでは、と思った。

ただ、一日あれば行ける距離なので、バンコクに行くことがあればぜひ行ってみてほしい。

シンガポールは不思議とカオスで満ちている

2018年3月

北京を出た中国国際航空便は、早朝のシンガポールチャンギ国際空港に着陸した。
シンガポールは入国の際に帰りの航空券が無ければならないそうで、成田空港のカウンターでお姉さんから脅されたのだが、入国審査官に「ジョホールバルからマレーシアに入る」と告げると案外あっさりとスタンプが押された。

マレー半島の先端、ここシンガポールは交易の一大拠点として栄えた。
小さな島国でありながら、東南アジアをリードする国の一つとなっている。

今回は、そんなシンガポールを一日歩き回ってみようと思う。
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日本語表記もあるのはビックリだ。

チャンギ空港駅で地下鉄、MRTの一日券を購入する。
窓口が開く数十分前に訪れたが、既に長蛇の列が出来ておりさながら開店前のパチンコ屋といったところであった。
そんな状況でありながら、どういうわけか二つある窓口のうち一つしか開放せず、後ろのほうでは別の係員が暇そうにしている。
さっそく「アジア時間」の洗礼を受けている。

シンガポールのMRT一日券はデポジット式で、使用終了時に駅の窓口で返却すると金額の一部が返却される。
窓口でお姉さんに「どこで返却するか」と問われるも、英語の発音に問題があったため一発で聞き取ってはもらえなかった。

とんだ旅の幕開けであった。

MRTに乗り、都心部の「Bugis」という駅で降りる。
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いきなりだが、ビルがいちいち高すぎて首が痛くなる。
よく、地方出身の人が「東京でビルを見上げたら気持ち悪くなった」みたいなことを言っているのを聞いて東京育ちの私には理解ができなかったものだが、なるほどこういう感覚かと思った。

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朝ごはんはシンガポール名物の「カヤ・トースト」セットだ。
カヤジャムというジャムが挟まったトーストとコーヒーと、どういうわけかゆで卵がセットになっている。
「トーストボックス」というチェーン店がシンガポール国内に点在している。ちなみに香港でも見かけた。
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シンガポールはワンブロック進んだだけで建物のサイズが変わるのが面白い。
Bugis周辺を歩く。
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これは「サルタン・モスク(マスジット・サルタン)」。
アラブ人街にあり、建物としての歴史も長いのだそう。

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ド派手な壁画だ。
さて、せっかく一日券もあるのだから無駄に一駅分MRTの電車に乗って移動する。
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「リトル・インディア」は文字通りインド人街で、それらしいものがあちこちにある。
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建物もいちいちカラフルで良い。

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ただの路地裏なんだが、室外機の並びがなんとなく気に入った。

リトル・インディアで、訳あって『地球の歩き方』を開いていると、中華系と思われるおばあちゃんにその娘?と思われる人物に話しかけられる。
「ニホンゴ!」
「Yes. えっと、Can you speak Japanese?」
「アー...(よくわからなさそう)」
いや、なんなんだよ。
娘のほうは英語がわかっていそうだったが、おばあちゃんは英語がダメらしい。
シンガポール公用語は英語である。
彼女はシンガポール人ではないのか。それとも、シンガポールでも「中華系」コミュニティで暮らしているので中国語だけで生活ができているのか。


地下鉄で移動し、「オートラム・パーク」駅へ行き、15分ほど歩いていく。
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ここに来たのは、「シンガポール駅」として利用されていた建物を見るためだ。
かつてシンガポールにはマレーシア鉄道の列車が乗り入れていたのだが、その線路は廃止され現在はシンガポール北部のウッドランズ止まりとなってしまった。

だが、建物自体は残っているとの情報があり、こうして見に来たわけである。
現在はフェンスが辺りを囲っており立ち入ることはできず、それどころか前面が工事用のプレハブ小屋によって隠されている。
その姿を見ることができるのはこの場所だけであった。

重厚な石造りの、コロニアルな雰囲気の建物である。
かつてマレー半島を縦断する長距離列車がここを発着していたと考えると、非常にロマンがある。
とはいえ、現在では修復工事なのか解体工事なのかわからないが、かつての面影だけを残して建物が残っているのみである。
まあ見られただけましであろう。
シンガポールがこの建物の扱いをどうするかはわからないが、今後、何かしらの形で残ってくれればと思う。

少し移動して、「チャイナタウン」駅へ。
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もっとも、シンガポールは住民の多くが華僑なので総チャイナタウンという感じなのだが、ここは特に中国感がある。

さてここで、カメラのレンズ拭きを買い忘れたことに気づき、カメラ屋に入る。
無事にレンズ拭きは購入したのだが、カメラ屋の親父は奥から何やら出してきた。
「これは保護用フィルターなんだけど、20ドルでやるよ。いらないかね」と。
要するに、セールスというところだ。
しかし、まだ東南アジアの旅が始まったばかりだ。

「これから長い旅だから金使えないんだよね」と私が言うと彼は、
「長い旅なら、なおさら保護フィルターが必要じゃないか」と。
確かに。
「高ければ値引するさ。ほら、これでどうだ」
彼は電卓を叩き、その数字はどんどん下がっていく。

いやいや、ここで散財するわけにはいかない。
「うーん、やめときますわ」
そう言って私は店を出た。
しかし、歩きながら頭の中で、これから訪れるタイやらカンボジアやらの未舗装の道路の情景がぐるぐると回っている。

そうこうしているうちに、今回の目的地に到着した。
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ホーカーズは屋根のついた屋台街だ。多くの店が立ち並んでいる。
いろいろある中で、食べようと思っていたものがあった。
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シンガポール名物の「チキンライス」だ。
蒸し鶏と海南炒飯である。

オーダーするとオバちゃんがさっと作ってくれた。
とても美味しい。

しかし、それを食べている間にも、先ほどのフィルターのことが頭から離れない。

決意を固めた。
買おう。
そして私は、先ほどのカメラ屋に向かって歩き始めていたのであった。

さて、その途中の話である。
寺院の前で男たちが「フリー!フリー!」と叫んでいる。
入場無料ということだろうが、それならなぜ呼び込みなんかしているのだろうか。

寺院の説明書きの前で立ち止まっていると、そのうちの一人に声を掛けられた。
「入場無料だよ!」
「写真撮影有料って書いてあるけども」
「いや、気にすんな。さあ入った入った」
続けて彼は、
「ここからは土足禁止だ。ここで靴を脱げ」
と言う。
カラーボックスが無造作に置かれており、そこに置けと。
「靴を見といてやるよ。一回2ドルだ」

なるほど。ここで全ての謎が解けた。
入場無料の寺院なのに必死に呼び込みをするのは、彼らの「小遣い稼ぎ」のためだったのだ。
「オッケー、いいやそうしたら」
私はそう言って歩き出した。相手にするだけ時間の無駄だったのだ。
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先ほどのカメラ屋に到着した。
「やっぱり買うよ」
私はそういうと、親父は嬉しそうに「そうかそうか」と笑った。
値段も、値下げ後のものだった。

そうしてフィルターを購入したわけだが...。
彼は「ちょっと待て」と言って奥から何かを出してきた。
「マジックレンズ。これを付ければ望遠も広角も自由自在!」と。
まだまだセールスは続くようだった。

終らないセールスを断り、再びMRTの駅へと歩き出したのであった。

ちなみに、この時購入した保護フィルターは、半年後にマカオでバスに轢かれてさようならしている。

そういえば...。

シンガポールに来たのに、「アレ」をまだ見ていない。
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マーライオンだ。
日本人や中国人、アラブ人の観光客でごった返している。

「世界三大残念スポット」みたいな扱いをされているが、まあそこまで残念でもなかったというのが正直な感想である。もちろん、感動もしないのだが。
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奥にあるのはマリーナベイサンズのホテルである。
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これは「カベナ・ブリッジ」という橋。
歴史がありそうだ。
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これだけ見たらヨーロッパ感がある。
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コロニアル建築だ。
この地区にはこういった歴史的な建築が残っているようだ。

さて、地下鉄でさらに移動しようと思う。
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マリーナベイサンズの真下に来た。
あの、ビルとビルの間をつないでいる「屋上部分」が落ちてきそうだ。

しばらく歩くと
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出てきた。これこれ。
シンガポールの植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」である。

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映画「アバター」とか、そういう3D作品のなかに迷い込んでしまったかのような感覚になった。
現実にいるのか夢の中にいるのか…。

そしてここ、日が暮れるともっとすごい。
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段々暗くなっていく。
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ライトアップがなされる。
なんというか、ラスボス感がある。

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ちなみにこの「木」には登ることができる。
遠くにはシンガポールの街並みや港がよく見える。
今も昔も貿易の拠点なのだなと改めて感じる。
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ショーが始まるともっとすごい。音楽に合わせて光が変化している。

さて、ショーに圧倒されているうちにそろそろ移動の時間になった。
マリーナベイサンズに泊ればずっと見ていられるのだろう...。

MRTに飛び乗り、Bugis駅へ戻る。
ここから国境を越えるバスに乗るのだが、ここでもまた「東南アジアの洗礼」を受けるのであった…。


マレー縦断鉄道旅 ①初めての国境越え シンガポール→ジョホールバル
へと続く...。

マレー半島の先端にある小さな島国だが、中国やイスラム、インドと、様々な文化を一度に見て回れるのがシンガポールの魅力だと思った。
ある意味で、某「夢の国」を思わせる”テーマパーク”といった感じであった。
一方、不思議な人々にもたくさん出会えるのもまた面白い。

日本からもそんなに遠くはないので、ぜひ行ってみていただきたい。

寒波迫る真冬の北国へ ④弘前→青森→東京

前回までのあらすじ
年末寒波の中、ギリギリのところで旅程崩壊を避けてきたものの、ついに乗車予定だった北上線がダウン。しかし、盛岡から「立席特急券」を利用してこまち号で秋田へ向かうことに成功した私は、より北を目指し視界のない奥羽本線に乗り、弘前を目指す。

今回は仙台から盛岡・秋田を経由し弘前そして青森へ向かう3日目と、青森から東京へひたすら下る最終日について取り上げる。

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秋田から2時間半。18:55 弘前に到着。
吹雪の中よく頑張ってくれた、という感じだ。
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ここから市内中心部へはバスで移動。小さなバスで揺られること10分。
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弘前城外濠に到着。
そう、これを見に弘前までやってきたのである。
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桜で有名な弘前城だが、冬にも「冬に咲くさくらライトアップ」が行われ、降り積もった雪にピンク色の明かりが照らされる。昨年からSNSなどで話題となっていた。
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「桜吹雪」とはいうが、本物の吹雪がピンク色になっているこの状況はただ寒いだけなのか...。
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弘前城天守閣。
雪がしんしんと降るなか、静けさに包まれている。
江戸時代から現存する天守閣としては、東北唯一なのだという。
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雪は止まる気配がない。

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さて、弘前城をぶらぶらしているとさすがに体が凍えてきた。
そんなときだった。
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洋館風の建物が目の前に。
スターバックスコーヒーの弘前城公園前店なのだそうだ。
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1917年に陸軍師団長の官舎として建てられたこちらは、国の登録有形文化財に登録されている。
ちなみにスターバックスでは、登録有形文化財を利用している店舗は神戸に続いて2店舗目なのだそう。
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リノベーションされているが、当時の姿をほとんど残しており素晴らしい。

コーヒーを飲んで温まったところで、そろそろ列車の時間も近い。
初乗り程度の距離なのでタクシーを利用した。

21:18弘前発の奥羽本線に乗り、青森へ。
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かつて長距離列車が発着した青森駅の長いホーム。
今では新幹線にその役割を譲ってしまい、すっかり持て余している。
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雪をはがす作業が難航しているようだった。

Agodaで2900円という破格の値段で予約したホテルに荷物を置き、街に出る。
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「青森まちなかおんせん」は、文字通り青森市中心部にある銭湯である。
遅い時間(たしか0時)までやっており、非常に使い勝手が良い。
今回の4日間の旅では、珍しく2回もお風呂に入れた。

さて、晩飯がまだだった。
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青森といえば煮干しラーメン。
「ラーメン砂小屋」では、あっさりとした煮干しラーメンがいただける。
駅にも近く、遅くまで営業しているのがありがたい。
煮干しラーメンといえば「濃厚」というイメージがあったので、なんだか新鮮な感じがした。

そんなところで3日目は終了である。


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朝6時の青森駅と雪かきに追われる人々。
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青森駅前の朝市で、マグロの中落ち丼を食べる。
贅沢な朝だ。
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青森のベイブリッジと発車を待つ青い森鉄道701系

ここからは青い森鉄道いわて銀河鉄道を経由して東北本線で東京まで一気に下る。
もっとも、青い森もIGRもかつては東北本線の一部だったわけだし、実質「東北本線に乗るだけ」の一日ということになる。
6:12 八戸行きの列車は青森駅を発車。

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夜が明ける。陸奥湾が見える。
対岸は北海道...と言いたいところだが、あちらは下北半島
青森県を東へ進んでいると、豪華寝台列車の四季島とすれ違ったのが見えた。
東北を巡る行程の旅行なのだろうか。カメラを構える暇などなかった。

青い森鉄道第三セクターでJR線ではないが、青森から八戸まで、途中下車せずに通過する場合にのみ利用が可能である。
なお、IGRいわて銀河鉄道については一切利用ができない。
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7:41 終点八戸に到着。
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8:53発の盛岡行きに乗り換え。
IGRの車両だが、青い森線内から直通している。

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青い森鉄道IGRいわて銀河鉄道の境界駅となる目時駅
特に大きな駅というわけでも無ければ、乗務員交代があるわけではない。
あくまで「県境」の駅である。ここからは岩手県に入る。
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味のある駅舎だなと思った。
10:49 盛岡に到着。
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ここからは再びJRになる。
なお、IGRとJRの改札口は別になっているので不正乗車などはできないようになっている。
もし八戸などでの乗り換え時間が足りずきっぷが買えなくても、盛岡駅で精算することは可能である。

11:07発の一ノ関行きは、わずか2両という編成である。車内は、地方での通勤ラッシュぐらいの満員だった。
むろん、満員電車状態は、列車が進むにつれて解消されていく。
終点の一ノ関には12:34に到着。
一ノ関からは小牛田行きに乗り換え、小牛田からは仙台行き、と、乗り換えが細切れになっていく。
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小牛田から仙台へ向かう列車内からは松島の景色も見ることができる。

14:23 仙台に到着。
そういえば昨日の朝もここにいたんだっけ...。
ここで少し予定外の動きをした。
常磐線経由で福島浜通りから行くルートを発見し、常磐線に飛び乗ったのだった。
ところが、途中のバス代行輸送区間で乗れるか不安だったのと、実家に到着するのが少し遅くなるということで今回はパス。
予定通り東北本線で下ることにした。

東北本線との分岐点にあたる岩沼駅で列車を降りた。
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運行区間も伸び、原ノ町まで行けるようになった常磐線
かつては東京まで繋がっていたが、原発事故などの影響で未だ全線復旧は果たせていない状況である(2019年1月現在)

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原ノ町・いわき・水戸方面」。
もう一度、復活してほしいものである。

岩沼から福島行きに乗り、福島からは新白河行きに乗り換える。
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日も沈んでいく。夜明けから日暮れまで、「一日を東北本線で過ごした」という感じである。
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18:09 新白河に到着。黒磯行きに乗り換える。
黒磯駅の直流化工事の影響で、黒磯と新白河の間の列車はキハ110かE531系になった。
今回はどちらかと思ったがまさかのキハ110。ここにきてまさか気動車に乗るなんて思ってもいなかった。
以前東北方面を訪れた際にはなかった、「新白河ダッシュ」なるものが発生していた。
関東へ向かう18きっぱーたちもどうせ同じ列車に乗るのである。
キハ110の2両というなんとも厳しい条件のなかで、なんとか座席を勝ち取ったのだった。

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18:44 黒磯に到着。
205系宇都宮線が「関東へようこそ」とでも言わんばかりにお出迎えしてくれた。
もうここから東京方面に出られればいいのだが...。
1時間乗車し、宇都宮で乗り換える。
19:43発の宇都宮線快速ラビット関東平野を南下していく。
大宮までは高崎線よりもはるかに早く感じられた。

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21:23 赤羽から埼京線に乗り換え、そして今回の終着・池袋へ到着。
4日間にわたる東北旅行は無事に終了したのであった。

寒波寒波と言われるなか、一部変更はあったものの基本的に大きな旅程崩壊は生じなかったのは本当に奇跡だと思う。
私とほぼ同時に東北を移動していた後輩は見事に旅程崩壊したそうなので、なんというか、申し訳ない気分だったりもする。

雪にまみれた4日間ではあったが、行ったことのない場所や見たことのない景色を見るのはやはりこの上ない楽しみであるなと感じられる。

さて、次はどこへ行こうか。

「寒波迫る真冬の北国へ」おわり



寒波迫る真冬の北国へ ③仙台→弘前

前回までのあらすじ
新潟から吹雪のなか日本海側を突き進む列車に揺られ、山形県の秘湯・銀山温泉に立ち寄ったあと仙台で牛タンを食べた。日本海側から一気に太平洋側へと抜けてきたが、この日は再び寒波が襲う日本海側へと向かう。

この日のルート
仙台→小牛田→前谷地→柳津→気仙沼→一ノ関→北上→横手→秋田→弘前→秋田
という予定だった。
しかし、やはり「年末寒波」がこの予定を狂わせることとなる。


本来、東北の太平洋側は雪が積もることはなく気候も比較的温暖なはずだ。
だがこの日の朝、幼馴染の住むアパートのドアを開けると、うっすらと雪が積もっている。
彼曰く、仙台は普段それほど寒くないのだが昨日の晩は珍しく寒かったのだという。
寒波は東北全体を覆っていたようである。

6:00仙台発の列車で東北本線を北上する。
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夜明けの小牛田駅。6:44
ここから少し「遠回り」をして北を目指すことにする。
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石巻線に乗る。7:11発
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朝日が昇ってきている。
雪こそ積もっているが、日本海側の暗い雰囲気とは異なる。
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前谷地にて乗り換え。
ここからは気仙沼線に乗り換える。のだが、「鉄道」には20分ほどしか乗らない。
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終点柳津から気仙沼までは気仙沼線BRT「バス高速輸送システム」で向かう。
8:06 柳津発

BRTはバス専用の道路を通行するバスである。
東日本大震災の影響で気仙沼線の柳津~気仙沼区間の線路は利用できなくなったが、このBRTという方式を利用することで見事に「復活」を遂げたのである。
なお、これも「JR気仙沼線」なので「青春18きっぷ」の利用は可能である。

BRTは噂通りバス専用道路を走る。
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鉄道用地の再利用なのでカーブやトンネルも鉄道そのものである。
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BRTは、専用道路を降りると一般道路を走行する。
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町も経由した。
沿岸部は更地に近い状態だったが、防潮堤工事のための重機が稼働しているのが見えた。
役場など街の中心的な施設が高台に移転しているようで、着々と復興は進んでいるようだった。
2019年1月現在、東日本大震災からはまもなく8年が経とうとしているが、三陸における地域の復興はまだまだ継続して進めるべき課題だと感じられる。
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現在のBRT志津川駅は、震災前に鉄道の「気仙沼線」の志津川駅のあった場所とは異なるようだ。
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10:00 約2時間の乗車で気仙沼駅に到着。
一般道路も通行するため、到着時刻は多少前後する。
BRTの専用道路も工事を進めているようで、いずれスピードも上がるのだろうと思われる。
乗客たちは引き続き大船渡線のBRTへと乗り換えていったが、トイレ無しのバスに3時間揺られるのはしんどいだろうなと思った。
ここからは再び「鉄道」に戻る。

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10:46 気仙沼発の大船渡線に乗車。
画像左手に曲がっていく「道路」は、先ほど乗ってきた「気仙沼線BRT」の専用道である。
このカーブの雰囲気は完全に鉄道のそれである。
震災前はこれがレールだったと思うと少し寂しい。

などと思っていたのも束の間...
大船渡線に乗車中、恐ろしい事実を知ってしまうことになる。

このあとの予定は、大船渡線で一ノ関に出たあと東北本線で北上まで行き、そこから北上線で横手まで向かうというものだ。
北上線はいわゆる「肋骨線」で、奥羽山脈越えをする路線である。途中には「ほっとゆだ駅」があることでも知られている。
ここ岩手県南部から日本海側に出るには、北上線田沢湖線が早いのだが後者は本数が極端に少ない。
北上線ももちろん多くはないが、たまたま時間が合うためにルートに選んでいたのだ。

さて、スマホを取り出しこの後の予定や運行状況を確かめる。
北上線 大雪のため運転見合わせ」
想定していないわけではなかったが、そっちか、という感じだった。
ツイッターでも乗客と思しき人々の生々しいツイートが表示されている。
再会見込みがないということで、本日中の北上線での移動は絶望的となった。

そうなると、もうあれしかない。あれしか...。
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12:07 一ノ関に到着。12:28発の盛岡行きに乗り換える。
本来降りるはずだった北上駅もスルーした。

私が出した結論はこれだ。
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盛岡14:14発の秋田新幹線こまちに乗れば、計画していた旅程の通りに移動できることが判明したのだった。

ところで、ご存じの方も多いかと思うが、新幹線こまち号は「全車指定席」、つまり自由席のない列車である。
つまり、本来は座席指定していないと乗車できない列車だ。
この年末の帰省ラッシュの時期、下りの新幹線に「空き」などあるわけがない。
表示器も、満席を示す「×」が書かれている。

それでは私は、こまち号に乗れないのだろうか。
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答えはノーだ。

JRの新幹線には「立席特急券」というものがある。
全車指定席の列車が満席となった時に発売され、文字通り座席の指定のない特急券が発券される。
この券があれば、デッキなどで文字通り「立ち乗り」することができるし、空席があれば着席することもできる(指定券を持つ乗客が乗ってきた場合は譲らなければならない)。
また、座席が確保されない代わりに、発売金額は通常期の特急料金の520円引きとなる。
考えようによっては”お得”だと思う。

さて、立席特急券について、条件などをまとめるとこの通り。
①全車指定席の新幹線が
②満席である場合にのみ購入可能
③座席は確保されないが空席があれば着席可能(指定券のある乗客が来れば譲る)
④価格は特急料金(通常期)の520円引

なお、数に限りがあるので、それも売り切れないと乗車できない。
...というわけで、学割と合わせて3600円という値段で盛岡から秋田へと移動することが可能なのであった。
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後ろにE5系はやぶさを連れてE6系こまちが入線。
まさかこの旅で新幹線(の列車)に乗ることになるとは...。

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数分遅れて発車したこまち号は、田沢湖線内を進む。
上で「新幹線の列車」とあえて書いたのは、盛岡から先は在来線を経由する「特急列車」という扱いになるためである。つまり「新幹線」だが「新幹線ではない」のだ。
我ながら何を言っているのかわからないが…。
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15:50 終点の秋田に到着。
在来線を走るこまち号が、お世辞にも「速い」とは言えないあたり秋田新幹線の高速化についての議論があるのも頷ける。
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ここからは奥羽本線普通列車でさらに北上する。
なんというか、この「前面」が道中の厳しさを物語っている。
16:27 定刻で青森行きの列車は発車。

吹雪の中を列車は駆け抜ける。
日も暮れ、視界はほとんどない。

そして、新潟でも聞いた「気象の関係で遅れが生じる可能性があります」との不穏なアナウンス...

果たして無事に弘前、そして最終目的地・青森へと到達できるのだろうか...。
つづく

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寒波迫る真冬の北国へ ②新潟→仙台

前回までのあらすじ
寒波が迫る中、雪のない静岡からわざわざ豪雪地帯を目指しひたすら北上した私は、新潟バスセンターのカレーに感動していた。二日目の今日はいよいよ東北地方へと入る。

この日は
新潟→新津→余目→新庄→大石田→羽前千歳→仙台
という動きである。

なお、記載してある時刻は予定通りの時刻である。
当日は気象の関係で遅れていたので多少前後していると思われる。

5:17の長岡行きで新津へ。
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新津で羽越本線に乗り換える。6:16発の酒田行きだ。
全線電化区間だが、キハ110ディーゼルカーによる運転。
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夜も明け、雪のなかを列車は進む。
「本日、大雪や風の影響で列車に遅れが生じる場合があります」という不穏なアナウンスが流れる。
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途中で対向列車とのすれ違い。
この特急も遅れているのだという。
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「荒波」という感じの日本海
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内陸もこんな感じである。
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一面真っ白の世界。よく走れているなと思った。
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9:15 余目に到着。
ここで陸羽西線に乗り換える。
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10:03発の新庄行き列車

列車は最上川に沿って山形県の内陸部へと進んでいく。
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10:54 終点の新庄に到着。山形新幹線の列車が出迎えてくれた。
在来線を走るのはわかっているけれど、いざ在来線ホームで見ると不思議な感じはするものである。

11:40 新庄発山形行きの普通列車に乗り換える。
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12:00 少し遅れて大石田駅に到着。ここから線路を外れて寄り道をする。

という予定だったのだが、ここである事実が判明する。

インターネッツによると、これから行こうとしている場所にはATMの類がないのだという。
財布の中を開く。野口英世が申し訳程度に入っている。

向こうでいくら使うかはわからないが、さすがにこれだけでは不安だ。
というわけで、大石田駅で先に下ろしておこう...

が、大石田駅近辺にコンビニはない...⁉

数百メートル先にはJAが、1キロほど先に郵便局があるのだという。
行けなくはないが、乗る予定のバスは12:35発。これを逃すと1時間半ほど待つことになる。
発車まではすでに20分を切っている。

とりあえず現金を用意せねば...!
慣れもしない雪道を早歩きする。溶けかけた雪がジーンズに跳ね、水は靴の底から染み込んでくる。
観光客然としたよそ者がそんなに急いでどこへ行くという感じだっただろう。
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大石田の街を歩く。

JAにたどり着く。が、ATMの場所がわからず、冷静に考えればそもそも使えるのかどうかというところもわからず、で撤収。郵便局へ。
緩やかな坂を下ると郵便局が。無事にお金を下ろすことができた。
だが、この時点で発車までは10分ほど。
望みはほとんどないが、歩いていく。

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ズボズボと雪のなかを進んでいく。

大石田駅にたどり着く、その数百メートルほど前でのことだった。
12:37頃だったか、バスが駅を出ていくのが見えた。

バスも遅れていたようだった。あと少し早ければ...。

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絶望していても仕方がない。
お蕎麦と水が有名な大石田町
大石田駅の構内にあるそば屋「ふうりゅう」で昼食。
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除雪車も忙しそうに働いている。
北海道に住んでいたとき、朝5時頃の除雪車の音で目が覚めたのを思い出した。

そんなこんなでバスの時間となった。約40分ほどバスに揺られる。
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銀山温泉(尾花沢市)に到着。

大正時代からの建物が今なお残されている。
観光客もそこまで多くはなく、しんしんと降る雪にかき消されてか温泉街は静けさに包まれている。
バスが一日数本というアクセスの悪さが、むしろこの雰囲気を残しているのだなと思った。

雪はコートや被っていた帽子にも積もり、寒さで手足の感覚がなくなりつつある。

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さて、せっかく「温泉」に来ているのだからお風呂に入りたい。
温泉街は旅館メインで、日帰りで立ち寄れる公衆浴場は一軒しかないようだ。

「しろがね湯」はその唯一の公衆浴場だ。
このモダンなデザインは隈研吾氏の設計らしい。

建物は狭く「順番待ち」が生ずるほどだったが、温泉は本物。
たちまち手足の感覚が戻ってくる。
料金は500円ほどであった。

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さて、日も沈みガス灯に明かりがつく頃だ。
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以下インスタグラムのフィルターを使用。
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ガス灯の暖かい光は温泉街全体を静かに照らしている。
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この景色を目指して全国、そして海外からも観光客が訪れるようになっている。
それでいながら決してうるさくはない、というところが良い。

本当は名物だというカレーパンが食べたかったのだが、あいにく売り切れ。
カフェやレストランもあるので立ち寄りたかったが、撮影に必死になっていたせいで入れずじまいとなってしまった。
そろそろ折り返しのバスもやってくる頃だ。18:21が最終バスなので逃すわけにはいかない。
大石田駅へと戻る。
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19:36 山形行きの奥羽本線の列車に乗る。
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20:20 数分遅れで羽前千歳駅に到着。
ここで仙山線に乗り換える。待合室こそあれど、まさか普通に無人駅だとは思わなかった。

ちなみに、線路は並行しているが複線ではない。
奥羽本線山形新幹線と同じ標準軌仙山線は一般的な在来線と同じ狭軌なので「単線が並行している」形になっている。
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20:31 仙山線仙台行きの列車が到着。
ここから太平洋側の宮城県へと向かう。

羽前千歳から仙台までは1時間20分ほどの移動。
仙山線山形県宮城県を結ぶ路線ではあるが、なんと山形市内と仙台市内しか経由する自治体はないのだそうだ。
どれだけでかいんだ山形市仙台市...。
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21:48 本日の目的地・仙台へと到着。
ここで、仙台に住む幼馴染と合流。
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牛タン定食
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牛タンの握り

うまい...‼
大寒波を抜けた先には旨い牛タンが待っていたのだった...。

今夜は彼の家に泊めていただくことになっている。
翌日も朝は早かったのだが、本当にありがたかった。

というわけで仙台で一泊。

つづく


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