或る旅2

おでかけ記録です。ライブドアからはてなに移転しました

2.14 長距離硬券廃止間近の岳南電車を訪れる

2017年2月14日
東京の実家への帰省ついでに、ちょっと寄っていきたいところがあった。

静岡駅から東海道線普通列車で約40分、静岡県富士市にある吉原駅に降り立つ。
今回乗る岳南電車は、その吉原駅東海道線ホームから長い跨線橋を越えたところから出ている。

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東海道線の車内からもわかる程大きくアピール。ホームの支柱が特徴的だ。

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天井が高く静かな駅構内には、駅員さんや乗務員さんが談笑する声が響く。
吉原駅で700円のフリーきっぷを購入する。ここから終点の岳南江尾駅まで片道360円なので、往復するだけでも元が取れる。

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改札を入るとちょうど1両編成の電車が入ってきた。元・京王電鉄の車両である。
発車時刻になると運転士がベルでそれを伝える。
乗り込んだ時には4人ほどしかいなかったが、発車する際にはそこそこの人数が席を埋めていた。
それでも決して混雑というほどではなく、遅れて駆け込む乗客を待てるようなゆとりが感じられたのだった。
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電車はトコトコと走る。「岳南」というだけあって、見える富士山のスケールも大きい。
この日は一日中雲がかかっていて残念だったが…。

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 岳南原田駅を出ると、列車は製紙工場の真ん中を通る。

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左右に広がる工場の風景。煙を吐き出す煙突、複雑に入り組んだパイプ、程よく錆びた手摺。
これらがたいへん美しい光景を作り出していた。
列車からしか見られない「絶景」である。

列車はそこから数分程度で終点の岳南江尾駅に到着した。
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奥には東海道新幹線の高架が見える。静かな駅だが、新幹線はその真上を轟音を立てて通過していく。
列車は数分ですぐに吉原へと折り返す。

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岳南富士岡駅へ戻る。
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ここ岳南富士岡駅では、岳南電車岳南鉄道として貨物事業を行っていた頃の機関車を見ることができる。手前がED40形機関車、奥がED30形機関車。
貨物輸送は岳南鉄道の主力事業であったが、減収などで2012年に廃止。翌2013年には岳南鉄道の鉄道部門の経営が「岳南電車」として分離したという歴史がある。

しばらく吉原方面の列車がないので隣の比奈駅まで歩く。

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製紙工場の煙が青空に映える。とてもよい。

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工場の間を歩くこと約15分、比奈駅に到着。
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この駅も駅員のいない無人駅。改札も寂しそうに佇んでいる。
駅事務室もきっと...と思ったら、なにやら人影が。
引き戸を開けてみると、鉄道模型が積んであるではないか…。
どうやら、「フジドリームスタジオ501」という模型屋さんのようだった。

店長さんは優しいおじさまで、以前は関東のほうで会社勤めをされていたそう。

鉄道の話、静岡の話、最近の学生の話…いろいろなお話ができた。
吉原行きの列車の時間になったのでお店を出たが、ぜひまた伺いたいと思った。

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吉原本町駅。路線全体を通じてほとんどが無人駅の岳南電車では珍しく、終日有人駅である。
こちらで今回岳南電車を訪れた目的の一つ…
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岳南電車名物ともいえる「硬券」。
東京や名古屋など長距離のきっぷも発売しているのが、岳南電車の特徴だ。

ところがこの春、岳南電車は長距離のきっぷの発売を取りやめた。
3月4日に行われたJRグループダイヤ改正に合わせ岳南電車ダイヤ改正を行い、その際にJRの乗車券発売範囲を670円区間まで縮小したのである。
これにより東海道線では静岡~熱海間と、購入できる区間が短くなってしまった。

今回は、ある人の頼みで複数のきっぷを同時に購入したが、吉原本町駅の駅員さんもきっぷ収集マニアには慣れきっているようで普通に対応してくれたのであった。

私自身はこの硬券を使って、”あること”をしようと思っていたので、購入した切符に入鋏(にゅうきょう、きっぷを切ってもらうこと)してもらった。まあ、写真を見ればわかるかもしれないが…IMG_5531

のんびりとした空気の流れる吉原本町駅
時がとまったかのようである…。

吉原に戻る列車が来るまで時間があるので、駅周辺を歩いてみる。
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どことなく江ノ電の駅っぽさがあると感じるのは私だけだろうか…

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 カクカクな急カーブ。

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路地裏も趣のある建物が多い…

さて、時間なのでそろそろ吉原に戻るとしよう。
ところで、岳南電車はJRの吉原駅とこの吉原の中心街を結ぶために作られた路線であることをご存じだろうか。
吉原”本町”とか、”本”吉原とか、駅名からもわかるようにも吉原の中心街は、JR東海道線吉原駅から少し北に離れたところにある。
旧東海道の宿場町として栄えた吉原は、もともとは海に近くにあったそう。しかし旧東海道津波の被害を受けたことで北へ移動したのに伴い、街自体が北へ移動。
後にできた東海道本線は、 もともとの吉原宿があった辺りに通されたが、そのころ既に吉原の中心街は線路よりも北にあった。そこで、東海道本線の駅と中心街を結ぶべく作られたのがこの岳南電車の路線だというわけだ。
その後、工場の発展に伴い路線自体も延伸していくこととなった。

工場の発展と結びついているからこそ、貨物列車の廃止はこの路線にとって痛いものだったのだろう...。

さて、そんなことを考えている間に吉原駅に到着。
ここからはJR東海道線で東へ移動、三島で降り、新幹線へ。
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そう、さきほど購入した硬券を使って新幹線に乗ったのだ。
検札の車掌氏は、ちょっと不思議そうな顔をしていたが、特に何も言われなかった。
平成も29年が経ってこんなことができるとは...。

そんなわけで、岳南電車から一枚のきっぷで東京へ向かったのであった。

 ※先述のとおり、2017年3月4日以降は長距離券の発売を取りやめたため、岳南電車から一枚のきっぷで新幹線に乗ることはできなくなっている。