中世の面影を残す世界遺産の街 イタリア・シエナを歩く
シエナを訪れたのは2016年9月のことだった。
ローマから「イタロ」でフィレンツェへ向かい、フィレンツェから普通列車で数時間。
ディーゼル列車で着いたのは、日本の地方を思わせる「田舎の駅」だ。
うーむ、ここが本当に世界遺産のシエナの玄関口なのだろうか。
どうやら駅から旧市街までは距離があるようだ。
ヨーロッパの古くからある町のつくりといった感じだ。
旧市街まではタクシーで10分程度の道のりである。
駅は谷底にあって、旧市街は山の上にあるような形だった。
タクシーを降りると、すり鉢状の丘に広がる古き良き街並みが広がっていたのであった...。
■目次
▶シエナとは▶メディチ要塞
▶シエナ街歩き
▶”世界一美しい”カンポ広場
▶シエナ大聖堂
▶おまけ
今回訪れた場所やルートは地図上に表示した
シエナとは
シエナ(Siena)はイタリア中部、トスカーナ州に位置する都市である。
中世には金融業で栄えた有力都市国家の一つで、13~14世紀に栄えた。
シエナ派といわれる芸術家たちも活躍し、後述するロレンツェッティらはヨーロッパ全体にも影響を与えた。
シエナの街自体も中世の都市計画に基づいて作られており、ゴシック風の外観の建物で統一されている。その街並みは今なお美しさを保っており、旧市街全体が世界遺産に登録された。
特に、後述するカンポ広場は「世界一美しい広場」と評価され世界中から多くの観光客を集める。
今回は、そんなシエナの街を歩いてみたいと思う。
なお、こちらに記載した情報は2016年9月現在のものである。工事や改修などで閉鎖や配置などが変更される可能性があるので注意。
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メディチ要塞
旧市街の入り口にあるメディチ家の要塞跡。
1560年にコジモ1世が造らせた。
現在は入場無料で自由に出入りできる公園のようになっており、市民の憩いの場となっている。
高台に建っているためシエナの街並みが一望でき、遠くにはトスカーナのブドウ畑も見ることができる。
メディチ要塞には、イタリア国内唯一の常設国営エノテカ(酒蔵)がある。
イタリア中のワインが集められ、購入することも可能だという。
カンポ広場を目指して歩いていこう。
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シエナ街歩き
すり鉢状の谷の上に広場や教会が位置している。
先ほどのメディチ要塞からカンポ広場の方へ歩いていると、このような景色が右手に見える。
どこを撮っても画になる...。
坂を下ってみる
ブランダの泉
丘の上に建つシエナに水を引くために設置された泉。透明度が高い。
これは…金魚?
カンポ広場方面へ向かう途中、こんな”橋”があった。
上ってみたくなる
街並みと奥の教会がよく見える。
カンポ広場の方向へと歩いていく。
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”世界一美しい”カンポ広場
世界一美しい広場とされるカンポ広場(Piazza del Campo)
建物はプブリコ宮殿といい、マンジャの塔がそびえている。
現在は市庁舎として使用されている。
プブリコ宮殿の内部は一般に開放されており、貴重な美術品を見ることができる。
中でも有名なのは、ロレンツェッティによるフレスコ画「善き統治と悪しき統治の寓意」である。
「平和の間」といわれる、シエナの行政や司法部門の評議員の椅子が置かれた部屋の壁に描かれている。
「秩序と富」のある「善き統治」の状態と、その反対側には「悪しき統治」の絵が描かれている。
14世紀に描かれたこれらの絵画には、政治に関するメッセージ。
さすがは数千年単位で共和政や王政といった様々な政治体制を経験してきたイタリアである。
撮影は公式では禁止のようだが、係員に尋ねたところフラッシュを焚かなければ大丈夫だとのことだったので撮らせてもらった。一応、問題になる可能性もあるのでここでは掲載しない。
看板の表示と係員の指示が違うことがあるのも、イタリアらしさがある。
※実際に行かれる際は、係員に聞くなどしてその指示通りに行動してください。
マンジャの塔には上ることもでき、カンポ広場を一望できるそうだが今回は見送った。
次回はぜひ訪れてみたい。
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さて、ここから少し歩いたところにシエナ大聖堂(ドゥオーモ)がある。
■シエナ大聖堂
ゴシック様式で、白と深緑の横縞模様が特徴的だ。
エキゾチックな雰囲気のある内部。どことなく”正教会”っぽい雰囲気を感じた。
中央のドームも迫力がある。
当然だが、フラッシュ撮影は禁止だ。
観光客(欧米人)はお構いなくフラッシュを焚き、その度に係員が「ノーフラッシュ、ノーフラッシュ」と叫んでいた。その辺のマナーはなんとかならないものなのか...。
中世のシエナは金融業で財を成した。フィレンツェも同様に金融の街であったことから、シエナとフィレンツェは互いにライバル関係にあった。
このシエナ大聖堂も、13世紀の建設段階からフィレンツェのサンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂と、どちらが世界一かを競い合っていたのだそう。
フィレンツェとの「世界一」対決に勝つべく、拡張を繰り返したシエナ大聖堂は新たな拡張計画を進めていた。
ところが、当時行われていた英仏間の百年戦争でイタリアから戦費を借りていたイギリス・フランスが共に借金を踏み倒したり、黒死病(ペスト)が流行したり、といった要因が重なり大聖堂の拡張どころではなくなった。
計画は頓挫し、拡張予定だったファサードの基礎部分が今もなお残っている。
拡張予定だったファサードの基礎部分。悲しいなぁ...。
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おまけ
その他、歩いたところや食事などについて紹介する。夜の街並みもなかなか良い...。
やはり坂の風景は映える。
坂の上にびっしりと並ぶ家々の風景
城門を出て、新市街や駅に出る途中の風景。
山の斜面にはブドウ畑も見られる。トスカーナ地方は良質なワインの生産地としても知られている。
さて、最後にトスカーナ地方の伝統料理を紹介して終わりたい。
「ピチ」と呼ばれるトスカーナ地方のパスタ。独特の食感の太麺はミートソースとよく合う。
シエナを訪れる際はぜひチェックしていただきたい。
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