或る旅2

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見に行ける北朝鮮 烏頭山(オドゥサン)統一展望台に行こう!

2018年9月18日。
韓国の首都・ソウル。
東アジア有数の大都市であるこの街は、韓国の政治や経済、文化の中心として世界的に広く知られている。最近では韓流ブームなどの広まりで、この街を訪れる人の数も増えているように思える。

一方で、韓国は政治的には決して「問題が無い」とは言い切れない状況にある。
それは、ご存じの通り北朝鮮の問題である。
現在は戦闘行為こそ行われていないものの、1950年に始まった「朝鮮戦争」それ自体は「休戦」状態にある。
そのため韓国では徴兵が実施されている、ということは有名であろう。
また、我々観光客の目に見えるものでいえば地下鉄の駅が「シェルター」として機能していたりと、ところどころ「戦時中」であることを思わせるものが散見される。

さて、そんな朝鮮半島の「分断」を体感できる場所が、ソウルから公共交通機関を利用して2時間で到達できるところにある。

「烏頭山(オドゥサン)統一展望台(오두산 통일전망대)」は、韓国人・外国人を問わず、誰でも自由に北朝鮮を見ることができるスポットである。
まずは写真をご覧いただきたい。
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漢江とイムジン川の合流地点。
その向こう側が北朝鮮である。

この展望台は北朝鮮からわずか2㎞の地点に位置しており、気軽に行ける場所としては韓国では最も近い場所なのではないかと思う。
「気軽に行ける場所としては」と限定したのは、「DMZツアー」として板門店軍事境界線を探索するツアーも存在するが当然ながら(自由な写真撮影ができないなど)制約が多かったり危険が伴う、という点で少しばかり気軽さを欠くからである(むろん、行けないことはないし、価値は十分にあると思うが)。

こちらの展望台では、身分証の提示どころか写真撮影も自由である。

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もう少し拡大してみる。
白く無機質な建物が、北朝鮮の民家である。
遠くには険しくそびえる山々を見ることができる。
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こちらは展望台に設置されていた望遠鏡にスマートフォンをつけて撮影した。
運がよければ自転車や徒歩で移動する北朝鮮の人々の姿を眺めることができるそうだ。
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手前(右手側)に見えるのは韓国の高速道路。
奥のほうには川幅が狭くなっている場所がある。ここが最も接近している場所なのだそうで、なんと460mしかないらしい。
川岸が「限界線」として設定されており、川沿いには鉄条網が張り巡らされている。

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少し視点を変えて。後ろを振り向くと、韓国の街並みを見ることができる。
ソウル近郊の、高層マンションが立ち並び、鉄道や高速道路が張り巡らされた景色である。

一方、その反対側には北朝鮮の貧しい村が見える。
たった2㎞しか離れていないのに、と思った。

その時、一羽の鳥が川を渡って北へ向かって飛んでいくのが見えた。

「国境線」なんて、人間が勝手に引いたものなのだと感じさせる出来事だった。
その点、「行けない」という不自由を自ら生み出した人間よりも鳥の方が自由なのかもしれない。
そしてその「分断」の悲劇を、より悲劇たらしめるものは彼らが同じ民族なのであるという事実だ。

展望台ではそんなことを思いながら、下の階へ移動する。

1階には、朝鮮半島の歴史や歴代大統領の統一への姿勢、北朝鮮の生活などについての展示がなされていた。もっとも、韓国語での表示しかない部分もあったのでわからないところも多かったが。
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どうやら、統一したあかつきにはソウルから平壌を経てパリへと向かうKTX列車を走らせる、というのが願いらしい。これについては、できるかなぁ...。

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展望台の建物。
内部では、北朝鮮に関するVTRも見ることができ、日本語も選択できる。
ちなみに韓国では朝鮮半島を「韓半島」、北朝鮮を「北韓」と呼ぶらしい。

さて、ここまでは展望台そのものについて触れてきたが、ここからはそこへの行き方について触れる。

私が利用したのは二通りのルートである。
行き:京義中央線の「金村駅」から「900番」のバスを利用
帰り:「2000番」のバスで地下鉄「合井駅」へ

行きの方法

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金村駅。
私が滞在した弘大周辺からも、地下鉄から乗り換え1回でアクセスできた。
ソウル都心からは40~50分くらい?

ここから、市バスの900番に乗り換える。
とはいえ案内表示の類は一切ないので聞きまくる。

駅の前には、鉄道と平行に大通りが走っている。
そこに駅前バスターミナルがあるのだが、「駅とは反対側のバス停」に停まる900番に乗ること。

このバスは、もちろん英語放送などというサービスはないローカルバスである。
運転手に予め「展望台に行きたい」と必死に訴えておいたおかげで、展望台最寄りのバス停で「ここだぞ」と教えてくれた。
もっとも、そのバスの終点だったようであるが。

市バスを降りると、広いパーキングエリアのような場所に着く。
そこでは展望台行きの無料シャトルバスが停まっており、運転手が暇そうに乗客を待っている。
「展望台か?」と聞かれ、「そう」と答えると、「待ってました」とでも言うようにバスに乗るように促される。これで、無事に展望台に向かうことができる。


帰りの方法
帰りであるが、どうやらソウル都心に直行できるバスがあるようなので、そちらに乗っていこうということに。

先ほどシャトルバスに乗った場所から、900番のバスで来た方向へと約1㎞ほど歩く。
広い交差点を左に曲がる。
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こちらのバス停から「2000番」に乗る。
1時間ほど?だった。寝ていたのでよく覚えていない。
都心に直行するので非常にありがたかった。

なお、2000番や市バスもICカード「T-money」の利用が可能だった。
たくさんチャージしておけば交通費であわあわする心配もないのでおすすめである。


「韓流ファン」じゃないと楽しめないかと思っていた韓国であるが、こういった歴史や社会について考えることのできる場に気軽に行けるという点で良いと思った。

関係はないが、奇しくもこの日(2018年9月18日)は南北首脳会談が行われていた。
非常に「ホットな場所」に行けてよかったと思う。

北朝鮮と聞くと危険なイメージがあるかもしれないが、この展望台自体は非常に安全だと強調したい。
北朝鮮が見えるということを抜きにしても景色が綺麗だし、その目的で来ても良いかもしれない。

実際に韓国世論が「統一」を望んでいるかはわからないが、いずれにせよ、問題が平和的に解決し、この場所が「絶景スポット」や「歴史資料館」になればよいのにと思う。